本誌は地域リトルマガジン的同人誌という姿になりつつある。
【YOKOHAMA発巻頭インタビュー「先人の営み、その精神を伝えたい!」清水靖枝】
 インタビュ-アは石渡均編集長。話すところの清水靖枝さんは、地元の市民活動家で、長屋門公園歴史体験ゾーン運営委員会事務局長、阿久和北部連合自治会事務局長、阿久和北部地区社会福祉協議会会長、NPO法人見守り合い広場代表など。藍綬褒章受章者である。
 清水さんの話には、日本人の生活の現場が良く見えて、大変興味深い。地域社会の現状である「自然破壊」の停止、日本の原風景を守ることをしてきた。子供の教育と、貧困問題、団塊世代の社会的活動の影響力など、都市部の住民の現実を知ることができる。
 国家として、教育方針を打ち出していても、それはお役人の空理空論にすぎなくなっていることがわかる。最近は、教育勅語の導入などがメディアで論議されているが、メディアですら国民意識の現実を知らないで、組織の上部構造のいうままであることが、報道なのか、その矛盾の露呈することを意識させる企画といえる。
【「パ、の同窓会」衛藤潤】
 おそらく、学校の同窓会を軸にした、女性の生活意識を描く。女性の夫は、同窓会は成功者たちが集まるもので、それを見せ合うものだと定義する。その一例を示す。現実の日本人の生活描写であるが、そこに提示されたことの意味を、読者が考える余地がある。
【「魚無釣堀場」片瀬平太】
 「大人の童話」という肩書つき。ある場所の釣り堀には、そこで釣りをすると、過去の幸せだった時代の幻想のなかに入れるところがある。アニメか、コミックの原作になりそうな題材。日本の国民が、国家のライフサイクルの最盛期を終えて、下降段階に入ったなかにいること強く意識させる。
【映画評クラシック日本映画選3「君は大魔神を見たか」石渡均】
 映画「大魔神」のこの時期に映画を見たことがないが、トリック撮影の手法がわかって面白い。
【「明日に乾杯」鈴木容子】
 派遣の仕事の一例(倉庫の物流仕訳)が詳しく描かれていて、その部分が面白い。現代人の生き方のひとつであろう。人間無欲になって、なにもいらない、なにしないことの焦りと、その幸せの見つけ方のむずかしさ考えさせられた。
【「梳く」草野みゆき】
 介護するなかで(おそらく親)、髪を梳く作業に焦点をあて、内面を表現する。人生を見つめるこまやかな心遣いが感じられる。

 

文芸同士会通信